フランシスコ・デ・ゴヤの油彩(メトロポリタン美術館蔵)

 
ニューヨークのメトロポリタン美術館が所蔵している、18世紀から19世紀にかけて活躍したスペインの巨匠、フランシスコ・デ・ゴヤの油絵を展示しています。
 
 
バルコニーのマハたち
フランシスコ・デ・ゴヤ
1800–1810年
油彩
125.7cm × 194.9cm

美しく着飾った若い二人の女と、その後ろに立つマントと帽子で姿を半分隠した怪しげな二人の男を、色彩的にも心理的にも強く対比させた、いかにもゴヤらしいモチーフです。一説には、この女性二人は娼婦で、後ろの男は女衒あるいは客と言われているようです。この「バルコニーの女たち」には、ゴヤが先に描いたオリジナルと呼ばれる作品があり、このメトロポリタンの作はゴヤによるコピーと言われています。オリジナルとこの絵は、男や女の向きやその表情などが異なっており、単純な写しではなくバリエーションと言ってもいいでしょう。ただ、このメトロポリタンのものはゴヤ本人の絵ではない、という説もあり、いまだに決着はついていないようです。
 
 
ナルシーサ・バラニャーナ・デ・ゴイコチーア夫人
フランシスコ・デ・ゴヤ
1815年
油彩
78.1cm × 112.4cm

この女性の肖像は1900年にマドリッドで開催された大々的なゴヤ展に初めて世に出たもので、夫のホワン・バウティスタ・デ・ゴイコチーアの肖像とペアで展示されました。夫のホワン・バウティスタは、1815年にフェルナンド7世の戦争大臣を務め、カルロス3世勲章を着用しています。彼は1805年にゴヤの息子ハビエルと結婚したグメルシンダ・ゴイコチーアと遠縁でした。
肖像の左手の指輪にGOYAと描かれてはいますが、近年、専門家から、この絵がゴヤによるものか否かにつきクレームがついており、決着はついていません。
 
 
マヌエル・オーソリオ・マンリーケ・デ・スーニーガ
フランシスコ・デ・ゴヤ
1787–1788年
油彩
101.6cm × 127.0cm

真っ赤な衣装を着たアルタミラ伯爵夫人の息子が、小鳥の檻と、三匹の猫の間に立っています。大きく見開いた猫の眼は少年のペットのカササギに釘付けになっているようで、一方、カササギはゴヤのネームカードを嘴にくわえています。ゴヤは、この動物たちの組み合わせを、子供の世界を悪から隔てる境界の脆弱さを思い出させるものとして、または、束の間の無邪気のはかなさを表すことを意図した可能性があります。マヌエルは、この肖像画が描かれてからわずか数年後、8歳で亡くなりました。