富嶽三十六景(MET)

 
メトロポリタン美術館(MET)の浮世絵コレクションから選びました。葛飾北斎の有名な富嶽三十六景から14点を選んで展示しています。

富嶽三十六景は、葛飾北斎が版元から依頼されて製作した連作で、富士山を望むさまざまな景色を描いています。好評ゆえにさらに10図が追加され、46点の作品があります。この成功によって名所絵が、役者絵や美人画とならぶジャンルとして確立したと言われています。
 
 
冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏
葛飾北斎
1831-33年
多色刷木版画
メトロポリタン美術館
25.7 cm × 37.9 cm

現在の、横浜の本牧の沖から富士山の方向を眺めたところを描いています。この、波の穂がまるでつかみかかる爪のように描かれた斬新な表現、そして、全体の構図のダイナミックさ、波のカーブに合わせて曲がった船、翻弄される人間たち、それをはるか遠くで見守っているかのような富士山、どれを取っても素晴らしい出来です。この絵は当時より世界で高い評価を得て、いまでは知らない人はいないほど有名な世界的名作です。
 
 
冨嶽三十六景 五百らかん寺さゞゐどう
葛飾北斎
1831-33年
多色刷木版画
メトロポリタン美術館
25.6 cm × 37.1 cm

五百らかん寺(五百羅漢寺)は、当時、現在の江東区大島の深川にあった禅宗の寺です。境内には三階建てのサザエ堂と呼ばれるお堂があり、その高楼から墨田川をへだてて富士山が良く見えたといいます。芸妓や武士、行商人や子供などさまざまな人々が、思い思いの姿勢でかなたの富士を眺めています。なお、この五百らかん寺は現在は目黒へ移転しています。
 
 
冨嶽三十六景 山下白雨
葛飾北斎
1831-33年
多色刷木版画
メトロポリタン美術館
25.7 x 38.4 cm

「赤富士」と呼ばれる「凱風快晴」はとても有名な富士山の絵ですが、それに対して本作品は「黒富士」と呼ばれています。富士の裾野は黒い雲に覆われていて、稲妻が走っています。富士の下側は暗く沈んでいますが、半分より上は赤く輝き、下界と天頂の天候の違いが強調されています。