キリスト教古典宗教画 (MET)

 
メトロポリタン美術館所蔵の、中世から前期ルネサンス期における、キリスト教の古典宗教画の数々を集めました。
 
 
磔刑
フラ・アンジェリコ
1420–23年
木板の上のテンペラ、金箔
63.8 x 48.3 cm

フラ・アンジェリコはルネサンス前期のイタリアの宗教画家です。この作品は彼の初期にあたり、嘆き悲しみ気を失う聖母マリアと弟子たちの悲しみの様子を下部に、そして十字架を取り囲むさまざまな姿態のローマの兵士たちや馬を中央に帯のように配置し、その上部では磔刑のイエス・キリストと、流れ出る血を受け取る精霊たちとが、円形に区切られた天上に、まったく異なる世界を表しています。それぞれの顔の表情の繊細さや、そのバリエーションはフラ・アンジェリコの個性をはっきり示しています。
 
 
哀しみの男
ミケレ・ジアボーノ
1430年
木板の上のテンペラ、金箔
54.9 x 38.7 cm

イエス・キリストはその墓の上に直立して描かれ、腕を広げ、手の傷と脇腹の傷と茨の冠からの血を見せています。左の小さな男は聖フランシスで、イエスの聖痕を赤い直線により受けており、彼は見る者の代理のような形になります。この絵はフランシスコ会の修道士たちにとっての貴重な瞑想と献身の対象でした。青い背景は劣化してしまっていますが、このパターンはイスラムの織物に由来しています。
 
 
キリストと聖母のとりなし
ロレンツォ・モナコ(伝)
1402年以前
テンペラ、キャンバス
239.4 x 153 cm

中央下にまとまって描かれている、著名なフィレンツェの一族8人と思われる人物たちに代わって、キリストと聖母が父なる神に慈悲を求めて嘆願しています。当時の描かれ方のヒエラルキーに従って人物たちはかなり小さく描かれています。キリストは脇腹の傷を指して「主よ、あなたが私に受難を望んだところの人々を救いたまえ」と言い、聖母は片方の乳房を抱き、「息子よ、私があなたに与えた乳のために、彼らに慈悲を与えてください」、と嘆願しています。父なる神の天からの現れ、聖霊の鳩、ひざまずくキリストが三位一体を表しています。この大胆な祈りのイメージのドラマを伝える絵は、元は聖堂の入り口に掛けられており、14世紀後半のフィレンツェの絵画に典型的なコンポジションを表しています。