神坂雪佳は、明治・大正・昭和にかけて活躍した近代琳派の画家・図案家。近年、その作品がエルメスのカタログ『Le Monde d'Hermes』の表紙に採用され、一躍脚光を浴びた。約100年前に考案したとは思えない斬新さや、ユーモラスなデザイン性をたたえる作品群から、雪佳は、図案家として歴代琳派絵師のなかで突出した存在と評されている。そのデザインは、さらに遡って、大阪で活躍した琳派絵師・中村芳中と相通ずるとこともあり、現代の視点からも、可愛らしく親しみを感じられる。本作では、琳派最後の継承者として、伝統的な垂らし込み技法を、「蓬莱山水図」と言う伝統的な画題に組み込んで売いる。伝統を受け継ぎつつも、やはり、雪佳の真骨頂、のどかでユーモラスな蓬莱山を描きあげた。